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主に本と映画のライフログ

最後の晩餐の作り方

イギリスの高貴なる趣味人にして美食家が、南仏プロヴァンスを舞台として語る、四季折々にふさわしきメニューの数々と幼少の甘き思い出。その絢爛たるレシピのあとに待つものとは? ベティ・トラスク賞ほか受賞作。
1章にひとり、人が死ぬ(どこかでこのコピーを読んだ)。饒舌な文体が語る仮面の真実とは。とめどない料理と芸術への薀蓄、身勝手な知識の横滑りを繰り返す話者の目的が本書の眼目だ。中身はわりと薀蓄炸裂系でごっちゃっとしてる。帯で大絶賛のどんでん返しに関しては平凡。ミステリないし実験文学を読む人なら、開始早々に到着点を予測できる。急所の周りをぐるぐると攻め、じらすような筆致にイラっとくる向きもあるだろう。短篇のネタじゃないか。確実に原書の雰囲気を伝えているであろう滑らかな訳。誰かと思ったら小梨直さんはピーター・メイルの翻訳を手掛けていた方ですね。どうりで上手いわけだ。

南仏プロヴァンスの食卓

南仏プロヴァンスの食卓

南仏プロヴァンスの木陰から (河出文庫)

南仏プロヴァンスの木陰から (河出文庫)

贅沢の探求 (河出文庫)

贅沢の探求 (河出文庫)