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主に本と映画のライフログ

シャルビューク夫人の肖像

19世紀末のニューヨーク。法外な報酬に釣られて、姿を見ずに肖像画を描くという奇妙な依頼を受けた肖像画家ピアンボ。屏風の向こうのシャルビョーク婦人が語る奇想天外な半生。婦人の語りはどこまでが事実でどこまで虚構なのか。混乱する画家の周囲で、にわかに奇怪な事件が頻発する。

リーダビリティが高い。一見、荒唐無稽に思えるストーリーを軽妙な文体で紡ぎ出す。プロット作りが上手いのか。読者を幻惑する手管がクリストファー・プリースト『奇術師』『魔法』、ローレンス・ノーフォーク『ジョン・ランプリエールの辞書』、中島らもガダラの豚』を連想した。境界線の上、バランスを取りつつ、ハラハラドキドキ、どっちに振れるのかはお楽しみ。ジャンルを意識して読んでいる人ほど、ジェフリー・フォードの「語り=騙り」に乗せられてしまうのではないか。余談、最近『ギャング・オブ・ニューヨーク』を読んでいたおかげで時代の空気を理解して望めたのは幸いだった(デッド・ラビッツの名前が出てきたり、主人公の親友が住んでいるのがヘルズ・キッチンだったり)。

ガラスのなかの少女 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

ガラスのなかの少女 (ハヤカワ・ミステリ文庫)