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主に本と映画のライフログ

ショートショートの世界

この上なく短いアイデアストーリー「ショートショート」の歴史を振り返る。「これもショートショートなんです」という紹介、「ショートショートについてこんな人がこんなふうに言っています」という引用に終始する。高井信によるショートショート入門。

誰に向けて書かれた入門書なのだろう、とまず最初に思った。自分も含め、好事家ならば本書で紹介されている本は読んでいるんじゃないか*1。少なくとも書名くらいは聞いたことがあるはずだ。かといって初心者向けだとしたら、書影を見せられて楽しいのか。選択肢は3つあったはずである。

  1. 単純なブックガイドにする
  2. 構造や方法論を記した研究書にする
  3. 実作を引用して面白さを伝える(折衷案)

新書という媒体を考えると3番が妥当である。ショートショートのバリエーションで章立てを作り、パターンごとに星新一なりフレドリック・ブラウンなりの傑作を例にとって、しくみと効果を解説する。んでもって「もっと読みたいならこんな本も出てるよ!」と紹介する、みたいな。シンプルだけど美しく、もっともショートショートを楽しんでもらえる構成じゃなかろうか。本書は読者を見失っている気がする。作者云々ではなくコンセプトの問題、編集的なしくじり。

*1:ほとんど持っていてびっくりした