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主に本と映画のライフログ

階級にとりつかれた人びと―英国ミドル・クラスの生活と意見

第1章 二つのミドル・クラス/第2章 ヴィクトリア朝—せせこましい道徳の時代/第3章 「リスペクタビリティ」という烙印/第4章 「郊外」のマイホーム/第5章 ロウアー・ミドル・クラス内の近親憎悪/第6章 貴族への憧れ、労働者への共感/第7章 階級を超えるメアリー・ポピンズ/第8章 クール・ブリタニア—「階級のない社会」?

イギリスの階級に「アッパー・クラス」「ミドル・クラス」「ワーキング・クラス」がある。一口に「ミドル・クラス」と言うがその中身はさらに細かくクラス分けされている。「アッパー・ミドル・クラス」「ミドル・ミドル・クラス」「ロウアー・ミドル・クラス」など。突き詰めると「ロウアー・ミドル・クラス」の中にも「アッパー・ロウアー・ミドル・クラス」「ロウアー・ミドル・ミドル・クラス」「ロウアー・ロウワー・クラス」がある。超細かい(イギリス人はこんな区別を日々意識しているのだろうか)。文学、新聞、雑誌、演劇、ライフスタイルなどからの縦横無尽な引用を例に、ヴィクトリア時代から始まる100年にも渡る「ミドル・クラス」の歴史を振り返った1冊。文化史の側面が強い。主に階級間のアクセントの違いから読み解いていった、同じ著者の『不機嫌なメアリー・ポピンズ』よりも、生活に根付いている分、具体的で理解しやすかった。身近な作家(H.G.ウェルズP.G.ウッドハウスなど)の出身クラスと作品の登場人物のクラスにおける相関関係が興味深い。上昇志向はよくないんだね、たぶん。

不機嫌なメアリー・ポピンズ―イギリス小説と映画から読む「階級」 のレビュー