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主に本と映画のライフログ

あなたの人生の物語

寡作な才人テッド・チャン、現在唯一の作品集。ひたすら面白すぎて梗概を明かしたくない。上手く説明できなかったら申し訳ない。よって寸評形式で。短篇ごとに個人的な好みで採点もする。結末があっさりと説明的でない点が特徴的。

「バビロンの塔」★★★★☆
壮大なスケール物語。俯瞰して見ると、ビュルガー『ほらふき男爵の冒険 』並みに突拍子もない。だがそこがいい。

「理解」★★★☆☆
どうして天才≒高慢になるのだろう。ダニエル・キース『アルジャーノンに花束を』 meets デヴィッド・クローネンバーグスキャナーズ』といった印象。

「ゼロで割る」★★☆☆☆
すみません、感覚でしかわかりません。ダーレン・アロノフスキー『π』を楽しめる人に。

「あなたの人生の物語」★★★☆☆
これは長篇で読みたかった。ファースト・コンタクトとある種のタイムパラドクスを掛け合わせたもの。ピアズ・アンソニイ『キルリアンの戦士』を再読したくなった(異種族との異言語交流という意味で)。

「七十二文字」★★★★★
もっとも好みだった。この世界でも等価交換の原則は有効なのだろうか。魔法と科学がパラレルな世界。ディ・キャンプ&プラット『神々の角笛』、ポール・アンダースン『大魔王作戦』を連想した。

「人類科学の進化」★★★☆☆
ツイストの効いたショートショート、と受け取った。再発見もまた科学なり。筒井康隆『旅のラゴス』は読んだ?

「地獄とは神の不在なり」★★★☆☆
現世と地続きの死後の世界(天国と地獄)。天使の跋扈によって引き起こされる災害。皮肉な覚醒。

「顔の美醜について――ドキュメンタリー」★★★★☆
好き好き。ノンフィクション風味のSF短篇。長さもちょうどいい。