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主に本と映画のライフログ

炎に消えた名画

チャールズ・ウィルフォードの職人芸。美術評論家フィゲラスは歴史に名を残す千載一遇のチャンスを得た。シュールレアリスム・アイコン、老画家ドゥビエリューのインタビューを決行する。
フィゲラスは規範に生きる男だ。自分の定めた人生のルールを厳密に守っている。傍から見ると自分勝手で気ままな生きざまにに見えるが、実はルールによってがんじがらめに縛られている。自我の堅固な檻の中に住まう。彼の規範を読み解けばエンディングが、良心や悔恨によるものではなく、周到に導かれた帰結であり純粋な優先順位に則ったものであることがわかる(『罪と罰』の反転)。本書は謎解きを競う類のフィクションではない。唯一の謎は“ドゥビエリューの新作”だがどのようなものか早々に見当がつく。むしろ犯罪心理、整合性を楽しもう。

罪と罰〈上〉 (新潮文庫)

罪と罰〈上〉 (新潮文庫)

罪と罰〈下〉 (新潮文庫)

罪と罰〈下〉 (新潮文庫)

罪と罰 (手塚治虫漫画全集)

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