modtimes

主に本と映画のライフログ

book

グラックの卵

アンソロジー“未来の文学”第1弾『ベータ2のバラッド』に続く第2弾。「見よ、かの巨鳥を!」「ギャラハー・プラス」「スーパーマンはつらい」「モーニエル・マサウェイの発見」「ガムドロップ・キング」「ただいま追跡中」「マスタースンと社員たち」「バーボ…

短編小説のアメリカ 52講 こんなにおもしろいアメリカン・ショート・ストーリーズ秘史

アメリカ短編小説の歴史。具体的な裏情報を駆使した事情通による手引きです。年刊のアンソロジーを根拠にアメリカ文化を読み解きます。 「翻訳家の解説書(レコメンド本)やエッセイにはずれなし」は定説です。特に青山南についていえばガチ。何かしら役立つ情…

愚者は怖れず

マイケル・ギルバートの本邦初訳。戦う校長先生ウェザロールが組織犯罪に立ち向かう。といってもアクションは皆無。人脈と行動力だけで真相に迫る。読んでいたときのイメージキャラクタはデンゼル・ワシントン。腕がなくなる人、爆発する人など捜査の過程で…

元気なぼくらの元気なおもちゃ

1) リッツ・ホテルよりでっかいクラック 2) 虫の園 3) ヨーロッパに捧げる物語 4) やっぱりデイヴ 5) 愛情と共感 6) 元気なぼくらの元気なおもちゃ 7) ボルボ760ターボの設計上の欠陥について 8) ザ・ノンス・プライズ ウィル・セルフ最高。3)と5)はよくでき…

バッド・ニュース

おひさしぶりのドートマンダー(だいぶん髪がさびしくなっている模様)。ミステリアス・プレス文庫とハヤカワ・ミステリ文庫を行き来してるのはなぜだ。 今回は期せずしてほかのチームとの連係プレイ。ドートマンダー側はおなじみのアンディ・ケルプ、タイニー…

トルーマン・カポーティ〈下〉

「白と黒の舞踏会」から『叶えられた祈り』そして死まで。晩年のカポーティはドラッグとアルコールで体はぼろぼろ。人間関係も「ラ・コート・バスク」事件で破綻し、心の拠りどころもなくしている。道化として生きるしなかないつらさ。友人知人の誰もがカポ…

トルーマン・カポーティ〈上〉

トルーマン・カポーティのオーラル・バイオグラフィ。上巻は出生から『冷血』まで。作家として充実していた時代。自意識過剰な天才を周囲がどう捉えていたか。多角度から照射された光。冷血 (新潮文庫)作者: トルーマンカポーティ,佐々田雅子出版社/メーカー…

ゴーストなんかこわくない―マックス・カーニイの事件簿

広告代理店アートディレクターと幽霊退治人、ふたつの顔を持つマックス・カーニイの大活躍? ブライアン・ラムレイ“オカルト探偵タイタス・クロウ”、W.H.ホジスン“幽霊狩人カーナッキ”、アルジャーノン・ブラックウッド“妖怪博士ジョン・サイレンス”などの本…

叶えられた祈り

映画『カポーティ』公開に合わせ、本作と『トルーマン・カポーティ』が文庫化された。実在の人物をモデルにしてハイソサエティの退廃的な生活を描いたスキャンダラスな未完の遺作。ものすごい先が気になる。ここからどうハッピーエンドに持っていく気だった…

ゲバラ日記

翻訳者の真木さん曰く、ほかのゲバラ日記は偽者らしい。ちゃんとキューバに許可を取って、原書に当たっているのは本書だけだとアピールをしてた。真相は如何に? 肝心の日記について。数少ないゲームの経験(三國志やら何やら)から想像していたものとどんぴし…

どこにもない国―現代アメリカ幻想小説集

エリック・マコーマック「地下堂の査察」 ピーター・ケアリー「Do You Love Me?」 ジョイス・キャロル・オーツ「どこへ行くの、どこ行ってたの?」 W.T.ヴォルマン「失われた物語たちの墓」 ケン・カルファス「見えないショッピング・モール」 レベッカ・ブ…

奇術師の密室

『激突』の原作者として有名なリチャード・マシスン作。語り手は往年の名奇術師。植物状態となった彼が車椅子から見つめる殺人劇!? 息子、その妻、妻の弟、妻の愛人が目の前で騙し合い(殺し合い)を始めてしまうという奇天烈な作品。何しろ植物人間だから見て…

アメリカン・コミックス大全

“大全”ではないにしろ、アメコミの歴史とヴァリエーションの概観を知ることができる。関係者へのインタビュー、エピソード、エッセイなど筆者の眼差しを透過した断片からアメコミ文化の真髄が浮き上がってくる。 知らなかった作品、いくつかのヒントをもらっ…

「個」を見つめるダイアローグ

寡聞にして伊藤穣一を知りませんでした。帰国子女的感性で客観的に日本を見てると思う。また細部への目配りが印象的(ちゃんと観てる気がします)。比して村上龍は“大人”になってから世界の中の日本を意識した人。よくも悪くも世界へのコンプレックスがある。…

冷血

カンザスの田舎町で起こった一家皆殺し。クラッター事件を描いたノンフィクションノベル。取材期間4年余、40年前の作品。今なら“サイコパス”の一言で括られてしまうだろう犯人ふたり、リチャード・ユージーン・ヒコック(28)、ペリー・エドワード・スミス(31)…

ぼくがカンガルーに出会ったころ

SF翻訳と言えばこの人。浅倉久志、初のエッセイ集。ほぼ訳書の「あとがき」集である。よっぽどのファンでないと面白くないかも。カート・ヴォネガット、P.K.ディック、ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア、ハーラン・エリスン、ウィリアム・ギブスン、 R.A.…

小説の読み書き

本書は佐藤正午流“小説の読み方”である。しかしながら小説家の眼差しというより、一般的な基本に忠実な文学部生の読書における目配りに近い。句読点の打ち方、書き出しの妙、主語述語の省略、タイトルの付け方などから読み解く術。これらを応用して近代日本…

ストーンコールド・トゥルース

基本的な内容はDVDそのまま。ワークやギミック、ロード、ケーフェイについては本書のほうがくわしい。スポーツエンタテインメントが好きな人だけでなく、興行に関心がある人も読んで損はない。WWE ストーンコールド トゥルース [DVD]出版社/メーカー: ジェネ…

封印の島

ピブル警視シリーズ第3作。今回我らが主人公は亡き父の元上司にしてノーベル賞を受賞した老科学者フランシス卿を訪ねてクラムジー島に渡る。ミステリとは呼びがたい変な話。前半はカルト教団潜入記、後半は海洋冒険ロマン。聖書に明るくないとつらいかも。 …

シェフの災難

『キッチン・コンフィデンシャル』のアンソニー・ボーデインが送るクライム・ノベル。当然のようにリーダビリティは高く、レストランが舞台なだけに超リアル(特に厨房の中は……)。読み出したら止まらない。名前は違うけど、もしかして『容赦なき銃火』の南国…

ポップ・カルチャー年鑑〈2006〉

2005年のポップ・カルチャーを総まくり。さらに「文化デリックのPOP寄席」全記録収録。川勝&下井草の魂の叫びを聞け。知らない音楽や映像、書籍など川勝さんの範疇に今日がある人ならなんらかの発見があるはず。読む価値あり。ポップ中毒者の手記 約10年分作…

25時

読後間もない独善的キャスティング。モンティ:ブラッド・ピット、スラッタリー:ベニシオ・デル・トロ、ジェイコブ:エドワード・ノートン辺りでどうだ。スパイク・リー監督によって映画化されている本作。モンティをエドワード・ノートンが演じている。ち…

すべてを食べつくした男

実践派料理評論家ジェフリー・スタインガーテン(VOGUE誌フード・ライター)のエッセイ。料理本に載ってるレシピを試しまくり。定説の虚実をデータから解き明かす。旨いものへの執念に脱帽だ。やっぱり美味しいものが好き (文春文庫)作者: ジェフリースタイン…

ベータ2のバラッド

NWSFアンソロジー6篇+1。ベータ2のバラッド(S.R.ディレイニー)―若かりし日の習作。四色問題(B.J.ベイリー)―W.バロウズを彷彿とさせる実験小説。降誕祭前夜(キース・ロバーツ)―ナチスドイツ×イギリス連合が勝利した世界を描く歴史改変物。プリティ・マギー・…

自殺じゃない!

世界探偵小説全集(32)。ペンデルベリー・オールド・ホール・ホテルで自殺したとされる父の汚名を晴らすため(むしろ保険金をガッチリ獲得するため)、奔走する息子、娘、娘の婚約者の素人探偵3人。おなじみマレット警部は終盤に登場してしっかり事件を締める。…

99999

「99999」「悪魔がオレホヴォにやってくる」「獣化妄想」「幸せの裸足の少女」「分・解」「ノーの庭」「ネヴァーシンク貯水池」「幸運の排泄物」の8篇からなるヴァラエティ豊かな短篇集。「悪魔」「裸足」のじわじわとテンションが上がっていく感じ、読者を…

いつ死んだのか

英国ミステリ。スノッブで静かでシニカルで時折あたたか。シリル・ヘアーの語り口はなめらかでリーダビリティが高い。本作も劇的なトリックや鼓動を高めるサスペンスはないものの、ズラシのテクニックはさすが。ヴィンテージの味わいをじっくり楽しめる。少…

銘品スニーカー図鑑

カタログにすぎない。物足りない。もっと深くに切り込んでいるものを期待していた。1メーカ1冊でシリーズ化してほしいくらい。載ってないスニーカも多い。たしかに狂乱のスニーカブーム世代的には懐かしく読んだが……。願いを込めて星2つ。ザスニーカーバイブ…

鞄が欲しい―万年筆画家が描いた50のカバン遍歴

読んだ後、鞄が欲しくなった。つまりよい本ということだ。好き嫌いがはっきりしている点がいさぎよい。たとえばハンティングワールドの位置付けはバブル期を経て大きく変わった(ブランドとしては消費された)。著者にはそんなこと関係ない。ブランドやステイ…

ジャズの名盤入門

太鼓判の名盤、必聴盤50枚を厳選したディスクガイド。心なしか後半に入るにつれ、擬音を多用し、温まってくる(音が沸きあがるようなグルーブ感)。思い入れたっぷりの熱い筆致がぼくも含めた初心者に最適かもしれない。いくつかの音源を聴いてみたくなった…