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主に本と映画のライフログ

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奇偶(上)

奇妙な偶然。併読しているマイケル・イネス『証拠は語る』にもアイスキュロス(古代アテナイの三大悲劇詩人のひとり)のエピソードが出てきて驚いた。天空から鷲が落とした亀が頭に当たって死んだ話。作品の中身については下巻を読み終えた後に。

壜の中の手記

豚の島の女王/黄金の河/ねじくれた骨/凍れる美女/骨のない人間/壜の中の手記/ブライトンの怪物/破滅の種子/壁のない部屋で/時計収集家の王/狂える花/死こそわが同志 北村薫絶賛、美しきフリークス譚「豚の島の女王」。アンブローズ・ビアスの失踪…

ステーションの奥の奥

東京駅と吸血鬼と探偵でこしらえた三題噺的な感じ。講談社が満を持して放った書き下ろし子ども向けミステリレーベル“ミステリーランド”の第十一回配本。 遅筆にもほどがありますよ、山口雅也さん。独特の世界観が鈍ってないことはわかりましたが、大人向けの…

殺しのグレイテスト・ヒッツ―アメリカ探偵作家クラブ賞受賞

世にも珍しい“殺し屋”に特化したアンソロジー。 ローレンス・ブロック「ケラーのカルマ」★★★★★ ジェイムズ.W.ホール「隠れた条件」★★★☆☆ マックス・アラン・コリンズ「クォリーの運」★★★☆☆ エド・ゴーマン「怒りの帰郷」★★★☆☆ バーバラ・セラネラ「ミスディ…

切り裂かれたミンクコート事件

「オールダリー荘」シリーズ第2弾。本邦初訳。バーフォード伯爵邸にて、殺人パーティの悪夢ふたたび。今度のお客は映画関係者だ。 前作『血染めのエッグ・コージイ事件』よりも読みやすい。読みなれたからかしら。ミステリ初心者にもお勧め。でもってミステ…

血染めのエッグ・コージイ事件

1930年代のイギリス、バーフォード伯爵邸に集まった15人。犯人は誰だ? 解説の小山正曰く、“カントリーハウス・マーダー・ミステリー”らしい。耳慣れない言葉でなく、一般に知られている“コージー・ミステリ”でいいんじゃないかって気もする。貴族の洋館《オ…

ミスター・ヴァーティゴ

1927年、セントルイスの孤児ウォルト(9歳)は、イェフーディ師匠と出会った。師匠は不思議な力を持っている。13歳までに空を飛べるように仕込んでやるという。連れて行かれた先には太ったジプシー女のマザー・スー、せむしの黒人少年イソップがいた。ウォルト…

アララテのアプルビイ

我らがジョン・アプルビイ警部の災難。乗ってた客船がドイツ軍Uボートの魚雷攻撃を受けて撃沈。逆さまになったガラス壁のカフェデッキで大洋へ漕ぎ出す。南太平洋の孤島に漂着したまではよかったが……。 待望の初訳。例によって奇人変人がたくさん登場し、と…

ポジオリ教授の事件簿

『カリブ諸島の手がかり』でおなじみ、名探偵ヘンリー・ポジオリ教授の帰還(ワトソン役を携えて)。 「警察署長の秘密」★★★★☆ 「靴下と時計の謎」★★★☆☆ 「ジャラッキ伯爵、釣りに行く」★★★☆☆ 「ジャラッキ伯爵への手紙」★★★☆☆ 「八十一番目の標石」★★★★☆ 「七…

美の構成学―バウハウスからフラクタルまで

副題そのままに「バウハウス」からから“フラクタル”までを取り上げ、美を読み解く鍵となる造形文法「構成学」の理解を深める1冊。 教科書的な勉強本と思って読むと、苦痛を覚えるかもしれない。気楽なのベッドタイム・ストーリーとして読むべし。著者が再三…

ハマースミスのうじ虫

東京創元社の〈クライム・クラブ〉叢書から1955年に発行されて以来、伝説の名著と語り継がれていた本作が新訳で復刊。主人公の素人探偵キャソン・デューカーはワイン輸入商。犯罪者狩りを道楽としている。ふとしたきっかけで恐喝犯バゴットの存在を知り、義…

エル・アレフ

博識の人ボルヘスの中期の短篇集。 不死の人 死んだ男 神学者 戦士と拉致された女の物語 タデオ・イシドロ・クルスの伝記(一八二九‐一八七四) エンマ・ツンツ アステリオーンの家 もうひとつの死 ドイツ鎮魂歌 アヴェロエスの探求 ザーヒル 神の書き残され…

隠し部屋を査察して

スコットランド出身にしてカナダの鬼才エリック・マコーマックの短編集。「隠し部屋を査察して」「断片」「パタゴニアの悲しい物語」「窓辺のエックハート」「一本脚の男たち」「海を渡ったノックス」「エドワードとジョージナ」「ジョー船長」「刈り跡」「…

カリブ諸島の手がかり

アメリカ人心理学者にして名探偵、ヘンリー・ポジオリ教授の活躍を描く。「亡命者たち」★★★☆☆ 「カパイシアンの長官」★★★★☆ 「アントゥンの指紋」★★★☆☆ 「クリケット」★★★☆☆ 「ベナレスへの道」★★★★☆ 読み終えて。読み返したくなった。上手い。三人称単視点…

絞首人の一ダース

スタンリイ・エリン、ビル・プロンジーニのお墨付き。“過小評価されている作家”アリグザンダーの珠玉の異色短篇集。 「タルタヴァルに行った男」★★★★☆ 「優しい修道士」★★★☆☆ 「空気にひそむ何か」★★★★☆ 「そして三日目に」★★★☆☆ 「悪の顔」★★★☆☆ 「アンクル…

失われた男

書割の狂気を描かせたら天下一品。“安物雑貨店(ダイムストア)のドストエフスキー”ことジム・トンプスンの埋もれた傑作が初翻訳、文庫オリジナルで登場。 平たく言って○○○がない男の話。すっきりしない。トンプスンの小説に何を求めているかで評価が分かれる…

大尉のいのしし狩り

『ヨットクラブ』に続くイーリイの第2短篇集(日本オリジナル編集版)。 「大尉のいのしし狩り」★★★☆☆ 「スターリングの仲間たち」★★★☆☆ 「裁きの庭」★★☆☆☆ 「グルメ・ハント」★★★☆☆ 「草を憎んだ男」★★☆☆☆ 「別荘の灯」★★☆☆☆ 「いつもお家に」★★★★☆ 「ぐずぐ…

怪盗グリフィン、絶体絶命

「あるべきものを、あるべき場所に」が信条の怪盗ジャック・グリフィン。カリブ海のボコノン島を舞台に極秘オペレーション“フェニックス作戦”がスタートした!誰にでも安心してお勧めできる数少ない国産ミステリ作家法月綸太郎が「かつて子どもだったあなた…

短篇集 シャーロック・ホームズのSF大冒険(下)

シャーロック・ホームズのパロディ&パスティーシュSF短篇集。過去・現在・未来・死後の4パート構成。 ■収録作品 第I部 過去のホームズ〈続き〉 ゲイリー・アラン・ルース「数の勝利」 ローレンス・シメル「消化的なことさ、ワトスン君」 バイロン・テトリッ…

短篇集 シャーロック・ホームズのSF大冒険(上)

シャーロック・ホームズのパロディ&パスティーシュSF短篇集。過去・現在・未来・死後の4パート構成。 ■収録作品 マイク・レズニック「序――死ぬことを拒否した探偵」 第I部 過去のホームズ ジョージ・アレック・エフィンジャー「マスグレーヴの手記」 マーク…

ニコチン・ウォーズ

タバコ業界のロビイスト団体の主任スポークスマン、ニコラス・ネイラーを主人公に喫煙派、嫌煙派のドタバタを描いた狂躁の一幕。まず文章が達者。ニックとその仲間(アルコール飲料企業、銃器関連企業のスポークスマン)が自らを自嘲的に呼ぶ死の商人(Merchant…

ダ・ヴィンチ・コード

よくも悪くも平板で平凡なバディ・ノベル(ハリウッド的)。登場人物は眠らない。『24』のジングルが頭を回っていた。映画よりは連続ドラマに向いた構成だと思う。御用聞きRPGを思わせる一本道。謎解きエンタテインメントが持っているべき圧倒的没入感は残念な…

あなたの人生の物語

寡作な才人テッド・チャン、現在唯一の作品集。ひたすら面白すぎて梗概を明かしたくない。上手く説明できなかったら申し訳ない。よって寸評形式で。短篇ごとに個人的な好みで採点もする。結末があっさりと説明的でない点が特徴的。 「バビロンの塔」★★★★☆ 壮…

死刑台のエレベーター

ルイ・マル監督の映画でおなじみ(音楽はマイルス・デイヴィス)。原作のほうはというと。訳が回りくどい、ほとんどの登場人物は心を病んでいる(女子はもれなくウザい)、感情的に動きすぎる。構造自体はシンプルなダブルバインドもの。そこに入り乱れる人間模…

炎に消えた名画

チャールズ・ウィルフォードの職人芸。美術評論家フィゲラスは歴史に名を残す千載一遇のチャンスを得た。シュールレアリスム・アイコン、老画家ドゥビエリューのインタビューを決行する。 フィゲラスは規範に生きる男だ。自分の定めた人生のルールを厳密に守…

ヤバいぜっ!デジタル日本―ハイブリッド・スタイルのススメ

妙に派手な格好をした胡散臭いおじさん(当時はお兄さんだったが)を初めて見たのはテレビ朝日「USAエクスプレス」(1990.4-6)だった。何者なんだこの人……。田舎から出てきたばかりのぼくには奇妙な生物に思えた。彼が取り上げるモノやヒトはとにかくかっこよか…

スペシャリストの帽子

・カーネーション、リリー、リリー、ローズ ・黒犬の背に水 ・スペシャリストの帽子(世界幻想文学大賞受賞作) ・飛行訓練 ・雪の女王と旅して(ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア記念賞受賞作) ・人間消滅 ・生存者の舞踏会、あるいはドナー・パーティー ・…

リクルート「創刊男」の大ヒット発想術

参考になったよ。「とらばーゆ」「フロム・エー」「エイビーロード」「じゃらん」を立ち上げた男が記した創刊のノウハウ本。人の話を聞くことが重要だと再三強調している。その通り。 グチ→夢→誰→何→形→時空→人→カネ。ロマンとソロバンの循環運動なり。自分…

乱視読者の英米短篇講義

第55回読売文学賞【随筆・紀行賞】受賞。『英語青年』連載。掲載誌が掲載誌なだけに、まさに“短篇講義”だ。たくさんレビューを読みたい人には不向き。筒井康隆『短篇小説講義』における短篇解釈への異論などもあり、なかなかに刺激的である。 UK: ジェイムズ…

殺しの時間-乱視読者のミステリ散歩

ひまつぶしにもブックガイドにもぴったり。若島さんのレビューはそそる、読みたくなる。好きな小説を並べてみると、同じ翻訳者であることが多い。ぼくらは作者の意図や文体などを翻訳者のフィルタを介して享受する。それだけに本を読む上で重要な要素のひと…